計算力学技術者試験の熱流体2級に合格するのに必要な勉強量

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2022年12月に計算力学技術者の熱流体分野2級を受けて合格することができました。難しいけどマイナーなのでネットから手に入る情報が少ないです。技術ブログとして内容を記録するとともに、これから受験する人の参考に熱流体2級へ合格するまでに行った勉強量を紹介します。

こんにちは。wat(@watlablog)です。振動1, 2級に続き、熱流体2級も取得しました

この記事は当ブログ活動の成果を記録する位置付けで書いています。特にプログラミングコードや技術的な内容はないので気になる方のみ読んでみてください。計算力学技術者試験をこれから受ける人にとっては少し参考になるかも知れません。

計算力学技術者取得のモチベーションと受験前レベル

計算力学技術者試験とは?

この記事では計算力学技術者試験熱流体分野2級に合格するのに必要な勉強量を紹介しますが、マイナーな試験なのでまずは概要から知っておきましょう。

とはいえ、筆者は振動分野の1級と2級を同時受験した時に以下の記事を書きました。試験自体の概要や合格率、資格取得に対する考え方等はこちらの記事を参考にしてください。
計算力学技術者試験1級と2級(振動)を同時に受験して合格した感想

複数分野の試験合格を目指すモチベーション

計算力学技術者は固体、熱流体、振動分野の3分野があります。さらにそれぞれの分野で1級と2級があります。筆者は振動1級と2級、そして今回熱流体2級に合格しましたが、今後も固体分野やその上位級を目指したいと思っています。

これだけ聞くと単なる資格ゲッターや資格マニアのように思われるかも知れませんが、一応複数分野を取得するモチベーションを持って進めています。

筆者は機械系エンジニアで日々製品開発に携わっていますが、計算力学技術者の複数分野取得を目指すモチベーションは知識をマルチドメインシミュレーションに活かすというところにあります。機械設計や製品開発の現場では日々様々な技術課題を解決していく必要がありますが、技術課題の多くは複数の力学分野が複雑に組み合わさってトレードオフ関係を持っています。

強度設計、熱設計、共振設計…を行うために近年ではシミュレーションを行うのが必須ですが、どれか1つだけに詳しければ良い設計ができるというわけではありません。
計算力学技術者試験はその勉強過程で数学、数値計算、各分野の基礎と検証方法を習得できるため、複数分野取得の学習はマルチドメインの知識を得るには打って付けというわけです。

熱流体分野に関する筆者の試験前レベル

熱流体分野における筆者の受験前レベルは、先ほど紹介した振動分野より大きく劣りました。振動分野に関しては主に実験をたくさん行っていたのですが、熱流体分野は熱電対で温度を測定したりPIVを少しだけ触ったりといったレベルで深い検討をしたことがなかったのです。実務でシミュレーションソフトは使っていましたが、それもまだオペレータの域を出ないようなレベルでした(S○○○-○○○+とかP○○○○○○○とか)。

ということで、とても1級に合格する自信が持てず今回ちょうど良さそうな2級を受験したというわけです。

筆者は一応機械系の大学院を修了しているため、基本的な流体力学熱力学の勉強はやったことがあります(はるか昔の記憶ですが、たぶん苦手だったと思います)。この記事では合格に必要な勉強量を紹介しますが、あくまで筆者の実体験を主観で書いています。受験する人の背景知識によって必要な勉強量は前後するのでご注意ください

計算力学技術者試験(熱流体2級)までに勉強したこと

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もくもく会(オンライン)

8月頃から毎週土曜9:00〜11:00で、Discordによるもくもく会に参加していました。この会は同じく計算力学技術者を目指す人だけで行うオンライン勉強会です。「もくもく会」の名の通り、基本的には黙々と勉強して、1時間おきくらいに各自の成果を発表するような感じで進行しています(もちろんわからない部分の相談も可)。

特にノルマがあるわけではなく、顔出しもしなくて良いので寝グセMaxで参加可能なゆるーい会です。

↓connpassというサイトで募集
https://connpass.com/dashboard/

もくもく作業するだけですが、時間を決めて毎週勉強するというのが最も合格に役立ったと思っています。多分今年も開催されると思うので、だらけてしまいやすい人はぜひ。

Pythonによる数値計算手法の実装

次によくやっていたのがPythonによる数値計算手法の実装です。
もくもく会では主に公式問題集をひたすら解きわからないところをググるという勉強方法ですが、それだけだと自分はよく理解できませんでした。

WATLABブログはもともとPythonプログラミングの学習からスタートしたので、今回は超速で工学プログラミングができるPythonを使って教科書の式をコーディングしていきました。

熱流体2級の内容で以下の10記事を公開しました。本当はOpenFOAMを使ってじっくり検証…というのを踏まえつつ試験日を迎えたかったのですが、ブログ記事を1記事書くのにかなり時間がかかるのでこれで限界でした…。

Pythonで1次元移流方程式を離散化して数値流体力学に入門する
Pythonで2次元移流方程式を数値計算する方法
Pythonで拡散方程式を数値計算してアニメーションを作成する
Pythonで2次元拡散方程式を数値解析して定常解析と比較する
Pythonで2D移流拡散方程式を数値計算して拡散流れを表現する
Pythonで2次元ラプラス方程式を数値計算する方法
2D数値計算の境界条件を画像から作るPythonコード例
Pythonで連立方程式をヤコビ法(反復法)で解く方法
Pythonで連立方程式をガウス・ザイデル法(反復法)で解く方法
連立方程式をSOR法で解くPythonコードと緩和係数のパラスタ

実務で数値計算をプログラミングする場合はC言語系やFORTRANを使うのが良いと思いますが、Pythonならプログラミング専門の深い知識がなくても動くプログラムはできるので、初心者向けだと思います。

参考書でわかったつもりでも、プログラミングで再現できないと理解できていない部分が露呈されるので、コードを書くというのは物理学全般で良い勉強法なのではないかと思いました。

普段の業務

計算力学技術者を目指す人は実務で使うからという人がほとんどだと思います。普段の実務に関しても熱流体2級の勉強内容と関連付けて理屈を調べるように意識しました。

公式問題集では基本的なモデルで圧力や流量を求める問題が多く出ていますが、実際にマノメータを使う実験等を行う時に式を書きながら作業すると理解も深まります(この期間は幸い流体系の仕事が多かったので)。

勉強した書籍の一覧

今回筆者は以下の書籍を参考に勉強を行いました。公式問題集には問題の解説が載っていますが、簡単に説明しすぎていて何がなんだかわからない場合も多々あります(たまに間違いも)。そのため色々なソースを確認しながら問題を解くのが学習として最善だと思っています。

熱流体2級で使った参考書一覧
[1]:計算力学技術者試験標準問題集(熱流体2級), 日本機械学会
[2]:JSMEテキストシリーズ 流体力学, 日本機械学会
[3]:Pythonで学ぶ流体力学の数値計算法, 藤井孝蔵, 立川 智章, オーム社, 2020年第1版第1刷
[4]:流体計算と差分法, 桑原邦郎, 河村哲也, 朝倉書店, 2022年初版第12刷
[5]:流体シミュレーションの基礎, 河村哲也, インデックス出版, 2021年初版第1刷
[6]:乱流の数値シミュレーション, 梶島岳夫, 養賢堂, 2020年第1版第3刷
[7]:例題でわかる伝熱工学, 平田哲夫, 田中誠, 羽田善昭, 森北出版, 2020年第2版第7刷
[8]:例題でわかる工業熱力学, 平田哲夫, 田中誠, 熊野寛之, 森北出版, 2021年第2版第4刷
[9]:流体の力学計算法, 森田泰二, 東京電機大学出版局, 2013年第1版15刷
[10]:偏微分方程式の数値解法入門, 山崎郭滋, 森北出版, 2015年第1版7刷
[11]:なっとくする偏微分方程式, 斎藤恭一, 武曹宏幸, 講談社, 2008年第2刷
[12]:OpenFOAMによる熱移動と流れの数値解析, オープンCAE学会, 森北出版, 2021年第2版第1刷

たくさんの書籍を紹介していますが、それぞれ隅々まで読み込んでいるわけではありません。例えば乱流の本は乱流モデルの定数群がどのように求められているかを調べたりといったことを参照する等、ごく限定的な参考として載せています。問題集だけだとそこまでの説明がなくただの丸暗記になってしまいます。少々お高い書籍群となりましたが試験に合格するだけが目的ではないので妥当な投資かと思います。

感想

勉強量を時間でいったら8月後半から毎週2h(トータル約30h)、調子が良い時は1日中やっている時がありましたが100hは勉強していないかも知れません。試験内容をここに書くわけにはいきませんが、標準問題集に載っている計算問題はちょっとした変化球にも対応できるようにしておいた方が良いでしょう(マクローリン展開とか、マノメータ計算とか)。

ともあれ勉強の過程でこれまで曖昧だった内容が少しは理解できてきたと思います。実務でバリバリ活用するためにはまだまだな気がしますが、振動分野と同じく合格レベル=入門のような感覚でした。

2022年は合格証郵送より先にWebページで合格がわかってしまいましたが、今年は郵送が先でした。問題集購入もクレジットカードに対応したり、運営側も年々改善しているようで好印象です。
今後も計算力学技術者の名に恥じないようにシミュレーション趣味レーションをしていきたいと思います。

祝2級合格

次は固体分野の2級かな(合格率がものすごく低いので恐ろしいですが…)?

合格は嬉しいけどこれは通過点!まだまだ頑張ります!
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