【G検定の学習】3度のAIブーム整理!過去の終焉理由と研究の動向

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JDLAが主催するG検定では人工知能(AI)の歴史や動向に関する設問も出題されます。ここでは、第3次AIブームの現代から過去を振り返ることでそれぞれのブームの要点と関連情報をまとめていきます。

こんにちは。wat(@watlablog)です。
G検定対策として、全3回のAIブームのきっかけ・関連情報・過去ブーム終焉の理由をまとめていきます

本ブログで学習結果を記録し、結果としてG検定に合格しました!皆さんも是非当ブログを参考にして下さい。

G検定に必要な知識

G検定学習のシラバスと本記事でまとめる内容

G検定とは、日本ディープラーニング協会JDLAJapan Deep Learning Association)が主催している認定試験です。

JDLA公式ページ:https://www.jdla.org/

G検定の概要は前の記事「【G検定の学習】人工知能(AI)の定義と分類を整理!」に記載していますので、最初から読みたい!という方は是非リンクをクリックしてみて下さい。

G検定の出題範囲はJDLAから「学習のシラバス」として公開されています。
この記事ではシラバスに記載されている「人工知能をめぐる動向」の学習記録として、現代までの全3回のAIブームをまとめます。

G検定ではAIブームに関連して、ブームの年代その時流行った技術名コンペティションの内容や優勝者ブームが終わった理由といった内容まで幅広く出題されるので、出題を意識して内容をまとめたいと思います。

個人的に、雑学が増えていくのは好きな方なので、はりきってまとめていきます!

参考書

僕の学習は「徹底攻略 ディープラーニングG検定ジェネラリスト問題集」で設問を解き、わからないことをWebやその他書籍で調べるというスタイルです。

※2022年2月はこちらの第2版が最新のようですのでリンクを更新しました。

注目の新資格「G検定」の問題集!業界の第一人者+AI時代の教育機関によるわかりやすい解説!!

本記事でまとめている内容は一般的な歴史・記録や広く知られた学問の内容のみです。
著作権の関係上、本に記載されているような設問はここに載せることができませんが、G検定を受験する予定のある方は、当ブログ等で学習した実力確認として上記問題集を購入してみると良いかも知れません。

TOEIC、〇〇検定、〇〇士…数ある資格試験で共通している事は、練習問題を多く解けば解くほど合格率やスコアが上がる、ですね。

それでは早速、以下から学習内容まとめに入ります。

第1次AIブーム:1950年代-1960年代

第1次AIブームのきっかけは推論と探索

ダートマス会議

第1次AIブームは1950年代後半から1960年代とされています。1956年のダートマス会議で初めて「人工知能」という言葉が使用されたことが有名です。

このダートマス会議は、人工知能研究で度々名前の出てくるジョン・マッカーシーJohn McCarthy)が主催です。

本会議は人工知能分野や情報処理分野の名だたる参加者で開催されていました。

発起人は,ジョン・マッカーシーの他,マービン・ミンスキー,クロード・シャノン,ナザニエル・ロチェスターといった人たちで,その他,T.More,A.L.Samuel,O.Selfridge,R.Solomonoffなどの参加者がいました.

人工知能学会:ダートマス会議

前の記事で紹介したA.L.Samuelは機械学習の定義をした人ですね。

2006年には1956年から50年経過を記念してAI@50という会議がダートマス大学で開催されました。

ブームの火付け役が勢ぞろいしていた会議、これからの技術を語っている時はさぞワクワクしていたことでしょう!

推論と探索の人工知能

第1次AIブームは「推論と探索」という手法を使った人工知能が台頭しました。

探索というのは、与えられた初期状態から目的として設定されたゴールまでの道のりを場合分けしながら進んでいくことです。
最も簡単な探索アルゴリズムに、幅優先探索BFS:Breadth-First Search)と深さ優先探索DFS:Depth-First Search)があります。

これら2種類の探索を図にすると下図になります。スタート地点を頂点にツリー構造をとった時、どういう順番(〇の中の数字が順番を意味する)で探索をするかが違いとなります。

BFSとDFS

BFSは分岐点において幅方向を全て調べてから次の深さに進むのに対し、DFSはまず深さ方向行き止まりまで調べてから分岐点に戻るという特徴があります。

このツリー構造はグラフとも呼ばれ、迷路や地点探索に適用可能です。例えば日本地図で東京を始点にすると第1層にぶら下がるのは埼玉、千葉、神奈川、山梨とツリー構造を作ることができ、探索問題に適用させることができます。

一方、推論とは「知識を元に新しい結論を導くこと」を意味します。
例えばオセロ(リバーシ)では、自分のコマで相手のコマをひっくり返せますが、次の手番で相手に多くのコマをひっくり返されない場所を推定して選んだ方が賢明です。

この推論と先ほどの探索を組み合わせ、ルールや枠組みが決まった問題であればコンピュータが出来るだけ早くゴールにたどり着くように選択肢を選び続けることができるようになりました。

チューリング・テスト

チューリング・テストの図

この時代の有名な出来事にはチューリング・テストがあります。チューリング・テストとは、ある機械が人工知能かどうかを判別するためのテストで、アラン・チューリングAlan Turing)が1950年に「計算機械と知性」という論文で提唱したものです。

このテストは、人間の審査員(判定者)に相手が機械だということを隠して対話させ、何割が人間だと思うかどうかを調べます

チューリング・テストを最初に通過したとされるプログラムとしてジョセフ・ワイゼンバウムが1966年に開発したELIZAイライザ)が挙げられます。

ELIZAは精神科セラピストのふるまいを真似るようにデータベースとルールに基づくプログラムでしたが、いくらかの審査員を騙すことができるという事実が世間を驚かせました。

その後、1972年にはケネス・コルビーPARRYパーリー)という自然言語処理プログラムを開発しました。このPARRYは何度かELIZAと会話しており、最初の会話の記録はRFC439(RFC:Requests For Comment)として残っています。

チューリング・テストにまつわるELIZAとPARRY、RFC439といったキーワードはG検定でも出るかもしれない内容ですね。

第1次AIブームの終焉とトイ・プロブレム

第1次AIブームでは、推論と探索を用いてルールの決まった問題をコンピュータで解くことができるようになりました。

しかし、ルールの決まった問題にはリバーシやパズル、迷路といったトイ・プロブレムおもちゃの問題にしか適用できないことがわかり、第1次AIブームは終焉を迎えました。

第1次AIブームは歴史的には冷戦の時代と一致します。冷戦時代は大国同士が互いに軍備拡張を行っていましたが、相手国の情報を素早く翻訳して自国の戦略を練るために機械翻訳という技術が研究されていました。

しかし当時の機械翻訳の精度は実用に堪えるレベルではなく、1966年にALPACレポートLanguage and Machines - Computers in Translation and Linquistics, A Report by the Automatic Language Processing Advisory Committe, Washington, DC, 1966)が発行されたことも相まって、人工知能に対する世間の期待は薄れていき、冬の時代が到来したのです。

機械翻訳をはじめとしたリアルワールド・プロブレムは当時の技術では限界があったのですね。

第2次AIブーム:1980年代

第2次AIブームはエキスパートシステムが台頭

エキスパートシステムとは?

エキスパートシステムとは、機械による知識表現を目的に構築されたもので、エキスパート(専門家)の知識をプログラムへ移植するという内容です。

これは知能は様々な方法で多くの知識を使うことだという考え方が由来とのことです。

プログラムの内容はシンプルで、専門家の知識を「もし~ならば」という条件分岐文の集合で表現した知識ベースを用意し、推論エンジンを使って答えを出すというものです。

2つの代表的なエキスパートシステム

有名なエキスパートシステムには、有機化合物特定AIのDENDRALデンドラル)や抗生物質処方AIであるMYCINマイシン)があります。

これらエキスパートシステムはある一定以上の性能を示すことがわかりましたが、特にMYCINは実際の現場では「コンピュータを医療に使って間違ったら誰が責任をとるのか」という倫理・法律の観点で使われなかったそうです。

知識ベースの限界と第2次AIブームの終焉

エキスパートシステムはごく限られた条件下では確かに有効でしたが、問題も多くありました。

エキスパートシステムは条件分岐を基本としているため、分岐が多くなればなるほど複雑になります。そして知識ベースの基本は専門家の知識となりますが、専門家の間でも意見がわかれるような内容や曖昧な部分は定式化が難しく、複雑な問題に適用できなかったため第2次AIブームは終焉を迎えます

結局、エキスパートシステムは人間による知識表現が必要であり、コンピュータ自身が知識を獲得することが出来ない現実がありました。
この難しさは「知識獲得のボトルネック」と呼ばれています。

知識ベースと推論エンジンから成るエキスパートシステムも一時的なブームで終わり、研究者への資金援助がどんどん停止していったそうです。

第3次AIブーム:2000年代~

3度目で見えた可能性!機械学習と深層学習

【G検定の学習】人工知能(AI)の定義と分類を整理!」の「2.2機械学習とディープラーニングの概要」でざっくりと紹介しましたが、機械学習深層学習ディープラーニング)の登場から今日に至るまで、つまり今現在は第3次AIブームとされています。

第2次AIブームでは知識獲得のボトルネックとして、人の手によってしか知識を獲得できない問題がありました。

しかし、機械自らが特徴量を抽出できる機械学習の技術がブレークスルーとなって再びAI研究に資金が投入されてきたということです。

当WATLABブログでは「PythonでパーセプトロンのANDゲートを実装する!」でパーセプトロンを紹介しましたが、このパーセプトロンというのは1958年にフランク・ローゼンブラッドが提唱したものであり、それほど新しくはありません。

パーセプトロンからニューロンモデル、ニューラルネットワーク、さらにニューロンを多層にするディープニューラルネットワークが2006年に登場してから、機械学習の可能性は大きく見通しがたってきたとされています。

ディープニューラルネットワーク

第3次AIブームを盛り上げた出来事

ILSVRCでディープラーニングの圧倒的な性能が示された

画像認識

ILSVRCImageNet Large Scale Visual Recognition)とは、簡単に言えばコンピュータを使った画像認識技術の大会です。

ImageNetとは、WordNetと呼ばれる単語の体系的なデータセットに基づき、それぞれの言葉を意味する画像がデータセットとして公開されたものです。

公式ページによると、現時点で1400万枚以上もの画像が用意されているとのこと。

Total number of non-empty synsets: 21841
Total number of images: 14,197,122
Number of images with bounding box annotations: 1,034,908
Number of synsets with SIFT features: 1000
Number of images with SIFT features: 1.2 million

ImageNet Sammary and Statistics:http://image-net.org/about-stats

圧倒的!!ImageNet半端ないって!!

ILSVRCはImageNetデータセットを使って学習を行い、課題となる大量の画像データがそれぞれ何なのかを当てる2010年からスタートした大会です。

2012年のILSVRCでは、ジェフリー・ヒントンが率いるAlexNetという8層のディープラーニングのアルゴリズムを使ったプログラムが優勝しました。当初は各参加者がコンマ数%の認識率を競うことが予想されていた所を2位以下に10%以上も差を付けて勝ったことが話題になりました。

この圧倒的な性能を示した結果は、ディープラーニングという技術に世間が注目するきっかけを与えました

当時のTwitterをまとめているサイト(togetter.com)がありました!これは当時の衝撃を物語っていて必見!

ちなみに、翌年以降はほとんどの参加者がディープラーニングを使うようになり(もうディープラーニングしかないじゃん!のノリで)、2014年では22層のGoogLeNet、2015年では152層のResNetが優勝しています。

AlphaGoが人間の囲碁トッププロ棋士を圧倒!

囲碁AIと人間

AlphaGoとは、Google DeepMind社が開発したコンピュータ囲碁プログラムです。

囲碁は将棋やチェス、リバーシと比べ、一手の選択肢や盤面の変化が非常に多いため最もコンピュータで制覇することが難しいゲームだろうと言われていました。

2016年3月には韓国のトッププロ棋士である李世ドル九段に5番勝負で4勝1敗と勝ち越しました。

2017年には新バージョンのMasterがネット碁の世界に現れ、中国・韓国・日本のトップ棋士を含む中で60戦全勝というとてつもない記録を残しました。
さらに、当時世界でも最強とされていた中国の柯潔九段にも3番勝負で完全勝利し、もはや囲碁の世界で人間は完全に凌駕されました。

AlphaGoはその後も完全な教師なし学習として、ルールだけを教えてあとは自己学習をするだけで前バージョンより強くなる等の進化をしており、第3次AIブームはまだまだ終わりを見せることは無いと予想されています。

僕もアマ5段くらいの実力で囲碁をやりますが、当時は毎日のニュースが衝撃でした!同じ囲碁プレーヤーとして悲しくもあり、技術の進歩を目の当たりにできて嬉しくもあり…という複雑な心境。きっと直にAIと対局したプロの方々はそれ以上の衝撃だったことでしょう。

AlphaGoのアルゴリズムや関連技術に興味のある方は、以下の書籍がオススメです! 普通のPCでも手軽にアルファ碁ライクな一手を体験できるプログラムも付いており、より実装向けの学習ができる内容です。

アルファ碁ゼロ対応 深層学習、モンテカルロ木探索、強化学習から見たその仕組み。

まとめ

本記事では全3回のAIブームの概要をまとめとして、各ブームにおける主流の技術、主な出来事、終焉の理由をまとめました。

第1次は推論と探索のAI、第2次はエキスパートシステム、第3次は機械学習といった代表的な技術があることがわかりました。

現代は第3次AIブームの最中であり、AlphaGo開発者の一人であるデミス・ハサビス氏は「第3次AIブームに終わりは来ないのではないか」とコメントしています。

今回はG検定の対策として関連内容を調査し、ノートのような感覚でまとめてみましたが、歴史を知れば知るほどAIの技術を身に付けたいという思いが強くなりました。

是非皆さんも人工知能の世界を学び、これからの技術の発展を一緒に楽しみましょう!

AIにはドラマチックな歴史的背景や出来事が満載で面白いですね!
Twitterでも関連情報をつぶやいているので、wat(@watlablog)のフォローお待ちしています!

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